ウラニアさんとあすなろ学院生との交流記録(4)日本語訳

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あすなろ学院生とプラハで活躍するピアニスト・ウラニアさんとの交流をご紹介しています。第4回のウラニアさんの返信を質問者ハルカさん本人が日本語に訳しました。言葉の壁を越えて伝え合う彼らの思いを感じとってください。

*追記:ウラニアさんからの返信に対して書いたお礼のメールを追加しました(9月5日)。

英語原文はこちら→ウラニアさんとあすなろ学院生の交流記録(4)

大人女子-3 私は幼稚園の先生になりたいと思っていて、毎日ピアノの練習をしています。でも本当はピアノを弾くのは好きではないのです。もっと練習すれば上手くなるのだろうとは思うのですが、それが出来なくて悲しくなってしまいます。あなたはピアノを練習している時、どう感じますか?子どもの頃、どうやって練習していましたか?(ハルカ)


Ourania 

ハルカ、質問してくれてありがとう。ピアノを弾くことをあまり楽しめていないのは残念ですが、でもその気持ち、わかります。
子どもの頃からずっとピアノを弾いていますが、ピアノを弾くのをやめて何か他のことをするべきだと感じることが今でもあります。
自分の体が何も作動していない様に思える日があり、単純なCメジャースケール(=ドレミファソラシド)を弾くことも出来ない時もあります。脳みそが何かをアップロードしていコンピューターの動きが止まっているような感じです。
私たちは人間なのだから、すべての日が良い日でなく、音楽や芸術ではこのようなときは(前進するのが)非常に困難です。
ピアノを弾くということは、気分、訓練、そして献身に大きく依存していますから、困難を伴います。しかし、大切な事は、何時間練習できるかではなく、どう練習するかです。これはすべてのプロセスの中で一番難しいことです。この「どう練習するか」という点では練習中の思考のクオリティーが最も取組み甲斐のある部分なのです。残念ながら私たちの気分は変わりやすく外的要因や他の人々の影響を受けることが非常に多いです。音楽芸術は感情、想像力、そして精神の敏捷性に大きく関わります。
 
ピアノのテクニックは、曲やピアノの素早い楽節をどれだけうまく精神的に処理できるかによって大きく異なります。全ては思考によって行われるのです。これを学ぶにはしばらく時間がかかりました。以前は何時間も練習していましたが、結果は望んだものではありませんでした。その時に私は指よりも心で作業する必要があることに気付きました。私は1日6時間の練習をやめ、3時間練習に変えました。その3時間で私は肉体的にではなく精神的にという意味で以前よりも多くの練習をすることができました。視覚化は私に大いに役立ちました。一つ例を挙げましょう。新しい曲を始める時、和音や曲想をつかみ取るために先ずそれを数回数回ゆっくりと通して弾きます。もしその曲が高度な技術を要するのであれば、曲をいくつかのパートに分け、指遣いを決めます。それから次の部分へと移ります。私は何度も何度も同じ場所を演奏するのではなく、まず特定のパッセージで起こっているすべてのこと、キーボードの指、使用している指遣い、演奏する音をスローテンポで視覚化しようとします。言い換えれば、思考の中の全てのディテールを保ったまま速めのテンポで演奏出来るまで精神の訓練を積むのです。何がその曲の中にあるのかを全て知っていると確信できるまでです。これは自信を持って出来るようになるまで数日かかりますが、でもやってみる価値は大いにありますよ。和声と構成の知識曲を習得するプロセスにおいて大切です。これらは練習している間によく考えるべき事です。もしあなたが視覚化の練習をしたことがないのなら、音階を弾くことの視覚化の練習から始めると良いかもしれません。音階は規則正しく並んでいて、指遣いや臨時記号に集中できるのですから視覚化の練習の取りかかりとして向いています。初めは不可能だと思ってしまうかも知れませんが、焦らないことです。
通常、他の考えがこのプロセス中に私たちの脳によぎることがありますが、何かを成し遂げたければトライし続けましょう。最後には上手く行きます。一定の方向で思考すること自体が癖のようなものであり、最終的には脳はあなたが望む方向で動くようになるものなのです。私が今までに何度ピアノから逃げ出したいと思ったか、何度「もう出来ない」と思って泣いたか、きっと想像が付かないでしょう。しかし幸運にも私の中にはいつも音楽に対する愛情と情熱があって、それらがいつも私をピアノの前へ引き戻してくれました。私はまだ進化していて、まだ自分の演奏方法などについて満足していません。完璧は存在しません。超一流のピアニストのインタビュー記事を読んでも、彼らですら完璧ということはまだ成し遂げられていないと分かるでしょう。
 
あなたの心が語る方向へ進むと決意されることを望みます。たとえ困難に直面したとしても、これが最良の道だと、きっと思えるからです。

大人女子-3 お返事が遅くなりすみません。返信ありがとうございます。

貴方のメールを読んでから練習する時に「量より質」という貴方のアドバイスを心に留めています。例えば、練習前にこれから弾く曲を聴いたり、楽譜を読んだりしています。最近、前よりもスムーズにピアノが弾けるようになった気がします。ピアノを習いはじめてから半年しか経っていないのでまだそんなに上手く弾けないのですが、これからはもっと練習して、いつか心配なく楽に弾けるようになれば良いなと思います。

今はコロナの影響で皆にとって難しい時期ですね。でもベストを尽くしましょう!お気をつけてお過ごしくださいね。(ハルカ)

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