コラム:日本史小話【8】緊急避難する村民たち

[コラム]日本史小話


濱口先生
(関西学院大学大学院文学研究科/日本史専攻)*執筆当時

緊急避難する村民たち

こんにちは。日本史担当の濱口です。

前回は「当事者主義と半手」についてお話ししました。今回は前回予告した通り「」をテーマに少しお話ししたいと思いますが、主たる内容は戦争時における村民の行動についてです。


合戦が起きた時、村に住んでいる人はどのような行動をとったのでしょうか。まずは命を守るために、自身を保護してくれるところに行きます。戦国時代における避難場所は、近くの城郭や寺社でした。皆さんも地震などで被災した場合は、近くの避難場所に行くと思いますが、そこへ家財道具を持って行けませんよね。当時の村民もお城に家財道具は持って行くことができませんでした。しかし、そのまま放置していたら略奪されてしまいます。では、大切な物をどのように守ったのでしょうか

1つ目の方法は、穴を掘って埋めることです。江戸時代前期に成立した『雑兵物語』という本には、家財道具の埋め方・隠し方が書かれています。例えば、「家の内には、米や着物を埋めるもんだ」とか、「外に埋める時は、鍋や釜におっこんで、上に土をかけべいぞ」(外に埋める時は、鍋や釜を埋めて、その上に土をかけるものだ)と書かれています。村民が知恵を絞って隠そうとしていた様がわかって面白いですね。また、隠された物の見つけ方も書かれています。多くの村でこのような隠され方をしていたからこそ、(略奪する側が)見つけ方を知る必要があったのでしょう。

2つ目の方法は、「預物」として寺社や他所の村に預けることです。合戦の危機に陥ってない村に、自身の村の家財道具を預ける習慣が戦国時代にはありました。このような「預物」をされるということは、他所の村から信頼されているということなので、大変名誉なことでした。また、村の秩序を守るために、緊急時に火事場泥棒のような行為はするなという村の掟もできていました。そして、村々が緊密なネットワークを築いていたからこそ、合戦時の情報が届いたり、「預物」を託したりもできたのです。つまり、戦国時代の村では大変お互いの関係が深かったことがわかります。

今回は、合戦時という緊急時において村民がどのような行動をとったのかについてお話ししました。なかなかたくましい村民の知恵がわかって興味深いですね。今回は略奪される側の村民のことを話しましたが、略奪する側の話もしないと何かキリがよくありませんね。次回は略奪する側である足軽たちのお話をしたいと思います。

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